耽溺

無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ
ずっとどこかで疑心暗鬼でいたから、今まで何となく平気だったんだと思う
でももう無理だ、大分前から辛かったけど更に無理だ
本気で、本当に、真面目に、一途に、あの人は私が好きらしいいや好きだ
どこかで疑っていたままだったら恋人の体で笑ってデートして楽しいだけでいられたのに
真摯に想われている信憑性が、真実味が、現実を知ってしまうと段々隠せなくなってくる
自分の過剰すぎる依存癖と執着心と見捨てられ不安に
連絡が来ない、なんで連絡してくれないの?
会えない、いつになったら会えるの?
些細な仕草、えなに嫌いになったの?
好きなんじゃないの?好きなんじゃないの?好きなんじゃないの?
好きならこうしてくれるよね、ああしてくれるよね
こんなことしないよね、あんなことしないよね
どんどん眠ってたゴミカスな私が次々起きてくる
早く手を打たないと同じ事の繰り返し
私のこの悪癖は相手の精神を攻撃するんじゃなくて相手の私を好きな感情をぶち壊す
何回も何回も何回も、学ばず治せずに来た
この人だけはそうしたくない
あーあーなんて安っぽい言葉。安直。稚拙。
それでも「この人だけは」なのだ、悲しいことに、この上なく愛しいことに
なんで私なんだろう
なんで私を選んでしまったんだろう
とんでもない貧乏籤だと分かって引いた男だ、考えるだけ答えは私の脳の外にある
いくらでももっとまともな人はいるのに
いくらでももっと幸せになれるのに、幸せになって欲しいのに
それだけの権利と価値のある人なのに
なんで私なの
私は権力も才能も地位も名誉も富も輝かしいものは何一つ持っていない
持っているのは病気と、罪と、べっとりとした愛情だけ
時々、いや、割と頻繁に思う事がある
でもそれを一度でも口にしてしまったらきっとひどく傷付いてしまうのは目に見えているから、ずっと喉の奥にしまっている
お互いをズタズタにするとても酷い一言
だからそんなものは奥に奥に押し込んで、笑顔で彼と手を繋ぐのだ、歓談するのだ
もう這い上がれない所まで来ている、苦手な部分はあれどまったく嫌いになれない、寧ろその逆の気持ちがひたすら膨張していく
彼の好意はとても暖かい、私の好意は棘が潜んでいる
私は彼を幸せに出来るだろうか。今更どんな完璧人間が現れようと譲る気はさらさらないけど
まあもし彼から手を離すような事になったとしても、きっと私は悲しみつつも「それが正解だよ」と見送れるのだろう
自分で書いててぼたぼたなんか落ちるのだから、本気でそんな事は勿論思ってないしやっぱり大好きなのだけれど。
好きだから苦しい、自分をどう殺すかが課題だ
向こうはとんでもない貧乏籤を引いてしまったけれど、
こちらは素晴らしい当たり籤を引き当てたのだ
うまいこと融合して普通の幸せを掴めたらなぁ

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