どうして。どうして、こんな。
私はどうしてこんな感情に支配されているのだろうか。
何が引き金を引いた?どこからそこに至った?
全てはきっと、また「ここ」にいるせいだ。きっと。

あれから、色々良い方向に変化があった。
突発的に募集、活動を始めたバンドが上手くいっていたこと。
5月の下旬に東京に来ると言っていた彼は、向こうの理由もあって4月の終わりに東京に来た事。丸一日と数時間、一緒に過ごせたこと。
一体どのツラ下げて私に顔を合わせればいいか困惑しまくっていた彼に、私は引っぱたきもせずただ随分長く伸びた前髪の向こうの目をしっかり見て、「おかえり」と笑えたこと。「ただいま」と笑い返してくれたこと。
それからごく自然に手を繋ぎ、歩いたり、食事したり、大事な話からくだらない話までして過ごした。
別れ際には私が物凄い勢いで引き下がって、結局家の前まで送って貰う羽目になった。それでも、その後バス停にいた彼に裸足で走って追いついて、笑顔で「またね」なんて抱きついたり、なんて下らない恋愛物語みたいな事をしたり。

その後、マイペースな彼とぽつぽつと連絡を取り合いながら、私は懐かしい不快感に襲われる。
「ここ」にいちゃいけない。どうしても。今すぐどこかへ行かなければ。数年振りのざわつき。
結局一番相談したくなかった彼に相談した。彼は、私の意向ならば止めない、周りから連絡が来てもシラを切ると協力までしてくれた。

私は5月6日、バンドのスタジオがある日に夜行バスの予約を取った。それは、立派な裏切りだった。
スタジオ集合時刻のギリギリまで、どんなにメンバーから連絡が来てもなるべく無視し、スタジオ入り1時間前程にどうしても言えない理由で今日はスタジオに入れない、追って詳しく連絡するとだけ残した。私はこれまで受けたバックレた人達と同類にはなりたくなかったから、何と言われようと出来るだけ正直な現状とこの先の事を、メンバーに火の粉が降り注がない程度伝えた。案の定グループラインは解散。片方は個人では全く連絡が来ず、もう片方は意外にも「無理せずな、ちゃんと帰ってくるんやで」と個別で連絡を送ってきた。
どちらにせよ、私は自分から始めた事を全て投げ出して、東京を後にした。

結果から書くと、約10日と少しの、無計画福岡旅行だった。
行きの夜行バスは空いていて隣の席もおらず横になれたりもしたが、体調は最悪で薬を飲んでも一睡も出来ないままバスに揺られ、げっそりして博多駅筑紫口側に降り立った。
ここが彼が今必死に生きている福岡、博多。
あまりにも体調が悪く疲れていた私は博多口のマックで一人、ひたすら彼に謝罪と現在地を伝えた。ほどなくして、そんな気は少ししていただとか、どこのマックか正確に教えて、行くから。なんて。
全くそんな展開を期待していなかった訳じゃなかった。それでも、そんな速度で、会えるなんて。
それからの事は、疲労と、安心感と、罪悪感で、細かい記憶はあやふやだ。
でも確かに彼とまた手を繋いで、笑いあって博多をのんびりと練り歩いた。
2週間近くの博多滞在で、彼と会えたのは3.5回。最初の日と、次の日一日と、ネカフェに泊まっている時仕事前に数分間だけ会いに来てくれたのと、最後の日夜行バスに乗るまで。
何も多くは望んでいなかったし、そもそも会えたというのが、会えるという事自体が奇跡的で、ひたすらに嬉しかった。また、沢山色んな話をして、色んな物を見て、笑って、泣いた。

それが帰宅後二日目のこの一夜。私の中で何が起きたのか。
誰に見られる場所でもないのも分かってる。ここからは、もっとぐちゃぐちゃな文章だろう。
私は彼が好きだ。大好きだ。愛している。彼も、少ない逢瀬でも私を愛してくれているのは十分すぎる程に伝わっている。
私は当然、彼と付き合い続けていたい。出来れば結婚もしたい。
なのに。
今夜の私は「彼と別れる道」に思考を乗っ取られている。
「私は当然、彼と付き合い続けていたい」それは、絶対だ。このとてつもなく苦しい今も。
でも、私が彼と付き合う事で私が彼から沢山の可能性を奪い取ってきたのではとか、私という彼女がいる事で彼は沢山の苦悩や葛藤を強いられているのではとか、ここまで来てやっとそんな事に気が付いてしまった。
ああ、でも、文章に起こす前に安定剤を飲んでいて良かった。長文を書いているうちに書き出す前のどうしようもない絶望感は大分薄れている気がする。
そんな事考えていたらきっとキリがなくて私はまた手首を切ってしまうのだろうし、そんな事をしても彼は喜ばないし、そもそも、あの日の夜中、私はいかに自分が事故物件か説明をした上で、彼もそれを承諾した上での交際の筈だ。結果それに耐え切れず家を飛び出した彼も、結局別件でも用があったとはいえ九州から東京まで飛び戻ってやり直しが出来る程、良い意味でポンコツ。
私も、勢いで九州に望み薄で飛び込んで結果会えてキャーキャーする、ポンコツ。

「私達」は、お互いに「頭がおかしい」んだと思う。常人より。
決してあっちの世界では住めない、こっち側の人間なのだ。
ああ、好きな事書き殴ってたら落ち着いてきた。
大丈夫、私は彼が大好き。私が重荷で彼が・・・なんていくら今考えても、杞憂だ。多分。
絶対なんてないけど、絶対を絶対にしてみせる方向に、私は変わろう。
彼だって、「今度は俺持ちでディズニー行くんでしょ?」なんて言ってくれた。
彼なりに、少しずつ私との先のことを見てくれている筈だ。
寄生虫博物館にも行かなきゃね。
私、やっぱりしのぶが大好きだな。
私がいない方がしのぶは幸せになれるなんて考え、やっぱり嫌だ。
忍は柚里を選んだし、柚里は忍を選んだのだ。
今はそれでいい。

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